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スウェーデンの歯科医療

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9月24~27日までスウェーデン/ストックホルムで行われたFDI(World Dental Federation;世界歯科学術大会)に参加してきました。

スウェーデンはサマータイムの終わりの時期でしたが既に日中でも15,6度と日本の晩秋といった気候でした。

アーランダ空港から田園風景の中を急行に約20分ほど乗ると首都ストックホルムに到着します。

市街に出てまず感じたのは、移民の多さでした。スウェーデンでは積極的な移民の受け入れを行っており、現在ではスウェーデン人3人に対して移民が2人と、その割合は人口の約4割にまで達しているそうです。

 

 

 

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  また、多いと言えば街中の建物、道路の補修、改修工事があちらこちらで行われていました。その姿は代々受け継いだ美しい街並みを現代に生かし、後世へと伝えるための弛まぬ努力に感じられました。

学会では『予防の道を切り開く(Pioneering Preventation)』が今年の主要テーマとされており、日本でも最近注目されているMI治療(最低侵襲治療/Minimal Intervention)や予防治療に関する疫学的発表などが数多く行われていました。

スウェーデンは早くから臨床研究データの蓄積が行われており、現在の歯科におけるEBM(Evidenc Based Medicine)の根拠とされる論文が数多く出されています。

インプラント(ブローネマルクシステム)を始め、口腔疾患予防に関する手法や、う蝕溶解液(カリソルブ)など近年日本に紹介されている診療技術の多くはスウェーデンでの臨床成績に裏付けられています。

日本でもここ数年、メタボ検診導入など医療における予防がようやく実際の社会制度に組み込まれてきておりますが、スウェーデンでは歯科疾患は70年代より既に予防可能なものと認識されており20歳まで毎年の歯科医院での検診、予防治療などの無料、義務化など医療制度のなかに疾病予防を実現する仕組みが包括されています。
 

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また今回の学会でも社会保障制度の研究発表にはかなりの時間が割かれていました。

スウェーデンでは過去20年の間に10回以上制度改正が行われるなど歯科医療制度に関しては現在も適正化の試行錯誤を繰り返しています。

前述の通り、スウェーデンでは20歳までは公的診療所で無料で治療が受けられます。

20歳以上の成人には今年7月より新たな制度が導入されました。
それは『任意の人頭制/Volantary Capitation』と呼ばれるもので、これについての研究発表も相当数みられました。

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『任意の人頭制』とは患者さんは任意で歯科医院と契約を結び毎月一定金額を支払う代わりに、いざ治療が必要となった際にも負担は毎月の定額のみというものです。
(まるで日本の民間医療保険の様です。)

イギリスでも2006年よりこれと似た制度が導入されていますがいくら治療しても歯科医院側の収入も定額のため治療の質低下が問題となりました。

そこでスウェーデンでは病状によって細かく治療法を定め、それ以外の治療法については公的保険を超える金額の差額徴収を認めています。
しかし歯科の治療費は自由設定(歯科医院により異なる)のため、口腔状態の悪い患者さんにとっては治療には以前より費用がかかる制度へと改正されてしまっている印象を持ちました。

日本では小泉政権時代の医療費削減の方針から診療報酬包括化がDPC(Diagnosis Procedure Combination:診断群分類)包括評価という形で医科に導入が始まり、歯科においても一部導入が試みられていますが、人頭制は「究極の包括払いモデル」とも呼ばれています。(現在日本で維持されている「出来高払い」はこの対局にあります。)

スウェーデンでは2006年9月の選挙で12年にわたり与党であった社会民主労働党が敗北し穏健党を盟主とする中道右派連合(中央党・国民自由党・キリスト教民主党)への政権交代が起こり、当時41歳のラインフェルト首相が誕生しました。

これに加え、近年のEUへの歩み寄り、NATO参加への動きなどの社会変化と共に世界に誇ってきた高福祉、高負担の社会システムにも影響が表れてきている兆しを感じます。

国民の中でも特に、まだ健康な若い世代にとっては厚い社会保障の代償とはいえ消費税25%という高負担は受け入れにくくなってきているのではないでしょうか。

今後もスウェーデンの社会保障の変化について興味深く見ていきたいと思います。(平/記)

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