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偶然の発見がもたらした人類への恩恵~チタンインプラント~

実際に使用されていた最古のインプラントはフランスのChantambreで発見された紀元1世紀後期か2世紀初頭のローマ時代の遺骨にみられた鉄製インプラントと言われています(Nature)。
今回はインプラント治療における歴史的発見についてお話ししたいと思います。
近年のインプラント治療における技術の進歩は著しく、その治療の成功率は90%以上と言われています。
しかし、草創期のインプラントは現在のものとは異なりステンレスや人工サファイアを素材としたものでした。
これらはインプラントと骨の間に線維性の組織が介在していたため、数年すると感染し除去する例も多々あり決して成功率の高いものではありませんでした。
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90%以上という高い成功率が得られるようになったのはチタン製のインプラントの出現以降、歴史的に見ればごく最近のことです。
現在、主流となっているチタン製インプラントの生みの親はスウェーデンの整形外科医/ペル・イングヴァール・ブローネマルク教授です。
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彼は1950年代、スウェーデンにあるルンド大学の医学部で、骨が治癒する過程で骨髄がどのような役割を果たしているかについて研究していました。
ある日、ウサギの脛骨(すねの骨)にチタン製の生体顕微鏡用の器具を埋めこみ、内部を観察する実験を終えて、その器具を取り外そうとしたところ、不思議なことが起きました。強く引っ張っても器具が骨からなかなか離れないのです。
よく見ると、骨と器具のネジがぴったりとくっついていました。器具はチタン製でした。これ以前に使っていた別の金属でできた器具では、骨と癒着したことなど一度もなく、ブローネマルク教授は「チタンは骨とつく」という性質を初めて知ったのです。
しかし、当時はこの性質を何かに応用できるとは考えなかったようです。
1960年、イエテボリ大学の解剖学教授となったブローネマルクは、血液循環の研究に取り組みはじめました。
生体内において血球がどのような働きをしているのかを探るために、今度は人間を対象とした実験に着手し、チタン製の生体顕微鏡用の器具を被験者の上腕に埋めこんで、血流の観察を試みたのです。
この実験をきっかけに、ブローネマルクは、チタンの新たな性質に興味を抱くようになりました。それは、チタンが骨だけでなく、軟組織(結合組織、上皮など骨以外の組織を軟組織といいます)に対しても親和性が高いという性質です。
またこの実験装置は、骨とは接触しておらず、軟組織に埋めこんでありました。観察は数か月にも及んだのですが、取り外したあとの軟組織には何の異常もあらわれていなかったのです。
つまり、チタンは生体に拒絶されなかったことを意味します。
この偶然の発見から、ブローネマルクはチタンがさまざまな医学領域に応用できる可能性があると考え、イヌの顎にチタン製インプラントを埋め込む実験を開始、数年にわたって行った動物実験の結果から、チタン製インプラントが骨と強固に結合することを確信し、これを「オッセオインテグレイション/Osseointegration(Osseoとは「骨の」、integrationとは「結合」を意味します)」と名づけ人間への臨床応用を始めました。
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最初にオッセオインテグレーション型インプラントが使われてから、約40年、現在では写真の様なチタンで作られたスクリューもしくはシリンダー型のインプラントが主流となりました。これら多様なインプラントシステムもその基本コンセプトはブローネマルクシステムと共通するところが多く、当時の製品設計を守ったインプラントシステムは世界で今も広く使用されています。
現在、各インプラントメーカーの研究開発のポイントはインプラントの耐久性、確実性から、治療期間、審美性、治療費用といった患者さんのニーズに向けたものとなってきています。
こういったメーカーの状況に加えインプラント治療を行う歯科医師が増加している状況を鑑みれば、日本でインプラント治療が一般的な歯科治療の選択肢となる日もそう遠くはないのではないかと思います。

(平/記)

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